バイク初心者にとって、バイクの専門用語はとてもハードルが高いもの。
バイクや自動車の専門用語は、詳しくない方には何を言っているのかサッパリ分からないはず。
今回は、そんな専門用語の中から、
「水冷」
「空冷」
について語ります。
- 空冷と水冷は何が違うの?
- 空冷と水冷、どっちが良いのか・悪いのか
- 気をつける点はあるの?
- 空冷と水冷の見分け方は?
- 油冷って何?
これらを分かりやすく解説していきます。
そもそも何を冷やすの?
空冷・水冷は、エンジンを冷やす方式のこと。
簡単にいうと、空冷と水冷の違いはこんな感じです。
空冷‥‥熱くなったエンジンを、空気と風で冷やす方式
水冷‥‥熱くなったエンジンを、水で冷やす方式
それでは、空冷と水冷の違いについて詳しく見ていきます。
空冷とは
空冷とはその名の通り「空気と風でエンジンを冷やす」方式です。
熱くなったエンジンに走行風を当てて、エンジンを冷やします。
エンジンに風を当てるだけなので非常にシンプルな方式。
自動車やバイクが発明された頃から続いている伝統的な冷却方式です。
水冷とは
水冷は「水でエンジンを冷やす」方式。
エンジンに冷却水を通して、冷却水でエンジンを冷やします。
熱くなった冷却水はラジエーターと呼ばれるパーツに通し、ラジエーターから放熱します。
つまり水冷は、熱くなったエンジンの熱をまとめて、一気に冷やす方式と言えます。
空冷と水冷のメリット・デメリットを比較
空冷と水冷、それぞれのメリット・デメリットを比べていきます。
空冷のメリット
空冷のメリットはこんな感じです。
見た目がカッコいい
空冷の一番の特徴は、見た目がかっこいいこと。
空冷エンジンには余計なパーツが一切ありません。
むき出しのエンジンが輝きます。
オールドなネイキッドバイクやアメリカンバイクに最高に似合います。
エンジン自体もカッコいい
空冷エンジンにはフィンが付いています。
これは、エンジンと空気の触れ合う面積を大きくして冷やしやすくするためのもの。
このフィンの無骨さが好きで、空冷のバイクに乗り続けるという方もいます。
整備が簡単で故障しにくい
空冷は、バイクが発明された当初から存在するシンプルな作り。
余計なパーツが無いため、エンジンまわりの整備が簡単です。
機械いじりが好きな方は、メンテナンスの楽しさを味わう最適の方式と言えるでしょう。
さらに、余計なパーツが無いということは、壊れにくいということ。
エンジンが故障しにくく、長く乗り続けることができます。
空冷のデメリット
空冷のデメリットは以下のような感じ。
オーバーヒートしやすい
空冷は空気と風だけでエンジンを冷やします。
そのため、常に風を受けていないとエンジンが熱くなっていき、オーバーヒートしてしまう危険があります。
エンジン性能が良くない
エンジンは温度によって性能が大きく変わります。
温度が低くても性能が落ち、逆に温度が高すぎても性能が落ちます。
空冷はエンジンの温度を一定に保ちにくくなっているため、空冷のバイクはエンジン性能が悪くなります。
エンジン音が大きいとは言われるけど‥‥
空冷のバイクはエンジン音が大きいと言われることがありますが、正直そこまで違いはありません。
エンジン音の大きさは、空冷や水冷の違いより、排気量や気筒数の違いの方が影響が大きくなります。
空冷・水冷の違いがエンジン音に与える影響はわずかです。
水冷のメリット
水冷のメリットはこんな感じです。
エンジン性能が良い
水冷は、エンジンの温度を一定に保ちやすい方式です。
そのため水冷はエンジンの性能をフルに発揮することができます。
特にスーパースポーツやストリートファイターなどの性能が重視されるバイクでは、ほとんどのバイクが水冷です。
オーバーヒートしにくい
水冷は空冷に比べ、エンジンを効率的に冷やすことができます。
そのため、空冷に比べてオーバーヒートしにくいです。
夏場などでもある程度安全にツーリングできます。
水冷のデメリット
水冷のデメリットはこんな感じです。
バイクが重くなる
水冷は、ラジエーターや冷却水などの水冷パーツが必要になります。
そのため、水冷パーツの分だけバイクが重くなります。
故障しやすい
水冷パーツは故障する可能性があります。
もし水冷パーツが故障してしまった場合、エンジンを冷却できなくなってしまい、非常に危険な状態になってしまいます。
一度オーバーヒートすると、乗れるまでに時間がかかる
水冷も「オーバーヒートしにくい」だけで、オーバーヒートする可能性はあります。
水冷は一度オーバーヒートしてしまうと、エンジンが冷めて乗れるまでに時間がかかります。
エンジン以外にもラジエーターや冷却水までもが高温になるので、冷めるまでには時間がかかってしまいます。
空冷・水冷で気をつけること
空冷と水冷では、それぞれ気をつけるポイントがあります。
このポイントを正しく抑えておかないと、最悪バイクが壊れてしまうことも。
それでは、気をつけるべきポイントについて見ていきます。
空冷で気をつけること
空冷で気をつけるポイントはこんな感じ。
オーバーヒート
空冷のバイクはオーバーヒートしやすいです。
空冷エンジンは走行風が当たり続けることを前提にして作られています。
暑い夏場にアイドリングし続けたりするのは、バイクに良くありません。
エンジンオイルの劣化
空冷のエンジンは熱しやすく冷めやすい作り。
エンジンオイルもダメージを受けやすい環境にあります。
つまり、エンジンオイルが劣化しやすい環境にあるとも言えます。
エンジンオイルの交換に気を使ってやる必要があります。
水冷で気をつけること
水冷で気をつけるポイントは次のような点です。
水冷パーツの破損
水冷パーツはとても繊細。
特にラジエーターは、石が飛んできたり、転倒してしまったりすると壊れてしまうことがあります。
水冷のバイクは、水冷パーツが1つでも壊れてしまうとエンジンを冷却できなくなってしまいます。
冷却水の交換
冷却水は長時間使っていると冷却性能が落ちてきます。
そのため、定期的な冷却水の交換が必要になります。
水冷・空冷の見分け方
バイクの空冷・水冷方式の簡単な見分け方を教えます。
それは
ラジエーターが付いているかどうか
ラジエーターは前輪の後ろ・エンジンの前に付いていることがほとんど。
次の写真を見てください。
水冷のバイクのみについているのがラジエーター。
空冷のバイクにはついていないのが分かるかと思います。
これがついているかどうかで空冷・水冷を見分けられます。
油冷とは?
実は空冷・水冷以外にも別の冷却方式があります。
それは、
油冷
油冷の原理は空冷とほぼ同じ。
空冷と違う点は、エンジンオイルを大量に使い、空気とオイルでエンジンを効果的に冷やすところです。
メリットやデメリットは、空冷と水冷の中間といったところ。
水冷に近いエンジン性能を発揮しつつも、空冷に近い軽量性を確保できます。
国内4大メーカーではスズキのみが採用していた油冷方式。
スズキは独自の油冷システムを「SACS (Suzuki Advanced Cooling System) 」と名付け、GSX-R750やGSX1400、イナズマなど、名だたる名車にこのSACSが搭載されました。
オススメの空冷バイク
YAMAHA SR400
ヤマハの大ロングセラーバイク、SR400です。
オールドスタイルネイキッドの代名詞と言えるSR400。
KAWASAKI エストレヤ
カワサキのネイキッドバイクの名車、エストレヤ。
古き良きブリティッシュな雰囲気を漂わせ、バイクに乗る楽しみを感じさせてくれる一台です。
オススメの水冷バイク
KAWASAKI Ninja400/250
2000年代後半から現在まで続いているスーパースポーツブームの火付け役、Ninja。
その現行モデルがNinja400/250です。
特にNinja400は、400ccクラスでありながら250ccクラスとほぼ同等の重量。
軽快な走りを見せてくれます。
HONDA レブル500/250
ホンダの現行アメリカンスタイルバイクのレブルです。
アメリカンスタイルでありながら水冷を採用し、見た目と走行性能の両方を重視。
近年のホンダのベストセラーアメリカンバイクです。
まとめ 見た目がカッコいい空冷と、性能重視の水冷。さらに、良いところ取りの油冷。
見た目がカッコよく、メンテナンスが簡単な空冷。
エンジン性能をフルに発揮できる水冷。
空冷と水冷の良いところ取りの油冷。
空冷・水冷・油冷をまとめるとこんな感じです。
空冷と水冷・油冷、どれが良いかは完全に好みです。
最速を目指して攻め続ける走り方を楽しむ方もいれば、ゆったりツーリングを楽しむ方もいます。
どれが優れている・劣っているというものは一切ありません。
それよりも注目すべきは管理方法。
空冷と水冷は気をつけるべきポイントが違ってきます。
自分の欲しいバイク・自分のバイクがどれなのかを抑えておきましょう。